スタッフ教育を、院長一人の仕事にしない——AIに「土台づくり」を任せる

01 ai×歯科実践

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教育に時間が割けないのは、構造の問題

スタッフ教育は、多くの院長先生にとって、常に優先度の高い課題です。ただ、優先度が高いにもかかわらず、そこに十分な時間を確保できている医院は、そう多くありません。

理由は、いたってシンプルです。教育の時間をつくろうとすると、診療の時間が減る。診療時間が減れば、売上に影響する。結果として、教育は後回しになっていきます。

この構造に対して、「院長がもっと頑張る」は、解決策になりません。院長の一日も、二十四時間しかないからです。これは、頑張りの量では超えられない問題として、多くの先生方の中に、課題のまま残り続けます。

では、この構造を、AIの力でほどけたとしたら。少し、具体的にお話しします。

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AIが担えるのは、「土台づくり」

はじめにお伝えしておくと、AIそのものが、スタッフを教育することはできません。スタッフとの対話、実技の指導、臨床現場でのフィードバック——これらは、やはり人にしかできない仕事です。

一方で、教育に使う「資料」は、どうでしょうか。ここは、AIに任せられます。

新人向けの研修資料、技術のチェックリスト、接遇マニュアル、症例別の対応手順書。こうした資料をゼロからつくるには、数時間から、ときに数日かかります。それが、AIに指示すれば、叩き台は数分で出てきます。

一番大変なのは、「ゼロを、イチにする」ところです。パソコンの前に座って、「さあ、つくるぞ」と身構える。その最初の一歩を、AIが肩代わりしてくれる。出てきたイチを、医院に合わせて、二にも、五にも、十にも磨いていく。そのスタート地点に、すぐ立てるようになります。

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実際に、研修資料をつくってみる

例えば、新人歯科衛生士向けの研修資料をつくりたいとき。私なら、AIにこう指示します。

「歯科医院に入職した新人歯科衛生士向けの研修資料を作成してください。入職一ヶ月目に習得すべき項目をリストアップし、各項目について、概要と注意点を記載してください。対象は、新卒の衛生士です。」

これだけで、研修資料の骨格が出てきます。

ただし、大事なのは、あくまで「骨格」ができるのであって、「完成版」ができるわけではない、ということです。AIが出すのは、一般的な内容です。自分の医院のやり方、ルール、設備に合わせた修正は、必ず要ります。そして、その修正こそ、院長やベテランスタッフにしかできない部分です。

KEY INSIGHT

ゼロからイチをAIに任せ、イチから先を人が仕上げる。この役割分担が、資料づくりにかかる時間を、大きく圧縮してくれます。

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チェックリストは、「音声」で磨く

もう一つ、効果的な使い方があります。スキルチェックリストの作成です。

「入職三ヶ月目の歯科衛生士が習得すべきスキルのチェックリストを作成してください。カテゴリーは、口腔衛生指導、スケーリング、TBI、補助業務の四つ。各カテゴリーに五〜八項目、各項目に到達基準を明記してください。」

こう指示すれば、チェックリストの叩き台が出てきます。これがあると、教育の「見える化」が進みます。新人が今どのスキルまで習得していて、次に何を学ぶべきか。教える側も、教わる側も、ゴールが明確になります。

そして、ここからが、労力を大きく減らすポイントです。それは、「音声」の活用です。

私は以前から、音声入力の活用をお伝えしてきました。情報というのは、結局のところ、テキストに集約されます。音声も、文字起こしをすれば、立派なテキストです。

つまり、こういうことができます。わざわざ全員で時間を合わせ、机を囲んで「さあ、項目を挙げていこう」と会議をしなくてもいい。AIがつくった叩き台を見ながら、「これも足したほうがいい」「ここが抜けている」と、思いついたことを、そのまま話す。その様子を、音声録音アプリや文字起こしアプリで録っておく。私が使っているのは、Nottaというアプリです。

あとは、その文字起こしを、AIにそのまま渡すだけです。整える必要も、まとめる必要もありません。「既存のチェックリストに、この文字起こしで挙がった追加項目を追記してください」。そう指示すれば、ブラッシュアップされたものが返ってきます。

キーボードを一生懸命叩く必要は、もうありません。話して、渡すだけ。想像していただくと、ずいぶん身軽になるのが分かると思います。

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教育を、「仕組み」に変える

教育資料とチェックリストが整うと、教育が、院長の「属人スキル」から、医院の「仕組み」へと変わっていきます。

院長が不在でも、ベテランスタッフがチェックリストに沿って教えられる。新人が、自分で資料を読み、自己学習を進められる。教育の質が、教える人によって、ぶれなくなる。

以前、弊社のセミナーにご登壇いただいている先生のクリニックを訪ねた際に、新人の方へ「この資料を読んで、そのまま説明できるようになってね」と手渡している場面を見かけました。教育が仕組みになっている医院では、こういう光景が、自然に生まれています。

教育が仕組み化されると、医療とサービスの水準が安定します。誰が教えても、同じ水準の教育が届く。それは、医院全体のチーム医療の質そのものを、底上げしていきます。

AIで資料をつくり、人で教える。人にしかできないこと——対話、フィードバック、臨床指導——に、院長の時間を集中させる。これが、教育におけるAI活用の、本質だと考えています。


財津 昇
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