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無断キャンセルの理由は、患者さんごとに違う
予約の時間になっても患者さんが来られない。十分待っても連絡がなく、電話もつながらない。結局その枠は空いたままになる。歯科医院では、珍しい光景ではありません。
無断キャンセルは、マナーの問題として語られがちです。けれど、患者さんのマナーを問題にしている限り、数は減りません。減らせるのは、予約を守っていただきやすい環境を医院側でどこまでつくれているか、という部分だけです。この記事では、その見直しどころを順番にお伝えします。
前回、自費カウンセリングについてお伝えしました。今回も同じ構造の話です。患者さんの行動を変えようとするのではなく、行動しやすい状態をこちら側で整える。それが、いちばん確実に効きます。
無断キャンセルが起きると、「予約を忘れるなんて」と考えてしまうことがあります。けれど、一口に無断キャンセルといっても、理由はさまざまです。
仕事が忙しくて本当に忘れていた方。子どもの体調が急に悪くなり、連絡する余裕がなかった方。治療への不安が強くなって、当日になって足が遠のいた方。痛みがなくなったので、もう通わなくていいと思った方。予約日を勘違いしていた方。
理由が違うのですから、同じ対策で全部に効くことはありません。忘れてしまう方には、前日のリマインドが役立ちます。けれど、治療が怖くて来院をためらっている方に通知を何度送っても、根本は変わりません。必要なのは、その方が何に不安を感じているのかを知ることです。痛みがなくなって通院をやめる方には、治療を途中で終えるとどうなるのかを、先に伝えておく必要があります。
つまり、無断キャンセルへの対策は、予約管理だけで完結する話ではありません。患者さんへの説明、スタッフとの関係、治療計画の伝え方。普段の診療の中に、見直せることがあります。
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前日のリマインドと、連絡のしやすさを整える
まず取り組みやすいのが、予約前日のリマインドです。すでに導入されている医院も多いはずです。送っているかどうかだけでなく、タイミングと内容まで確かめてみてください。
文面は難しくする必要はありません。「○○様、明日10月15日(木)15時よりご予約を承っております。ご都合が悪くなった場合は、お電話にてご連絡をお願いいたします」。予約日時を知らせ、都合が悪くなったときの連絡方法を添える。それだけで、患者さんが予定を確認するきっかけになります。
ここで気をつけたいのは、リマインドをスタッフの頑張りだけに頼らないことです。毎日、翌日の予約表を見ながら一人ずつ送る。人数が少なければ回りますが、忙しい医院では抜け漏れが起きます。「今日はバタバタしていて送れませんでした」が続けば、取り組み自体が定着しません。予約管理システムやLINE、SMSで自動通知にしておけば、スタッフの負担を増やさずに続けられます。
ただし、通知を送れば全員が来院されるわけではありません。LINEをあまり見ない方もいれば、SMSのほうが気づきやすい方もいます。電話のほうが安心される方もいます。医院に来られる患者さんの年齢層と生活に合わせて、無理のない方法を選ぶことが先です。
そして、意外と見落とされるのが、キャンセルの連絡をしやすくしておくことです。「都合が悪くなったら電話してください」と伝えていても、診療時間中に電話できない方はいます。連絡が面倒で後回しになる方もいます。予約の変更をどう受け付けるのか、診療時間外でも連絡できる方法があるのか。ここを整えると、無断キャンセルが「事前連絡のあるキャンセル」に変わります。
事前にわかれば、キャンセル待ちの方をご案内できます。無断キャンセルを減らすうえで、この差はとても大きい。
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次回予約は、日程ではなく理由とセットで渡す
診療が終わり、受付で次回の予約を取る場面です。「次は2週間後くらいですね」「では○日の15時はいかがですか」「大丈夫です」。よくあるやり取りで、これで問題なく通ってくださる方もたくさんいます。
ただ、患者さんの側から見ると、次回は何をするのか、なぜ2週間後なのかがわからないまま予約を取っている場合もあります。医院にとっては治療計画どおりの当然の予約でも、その必要性は自動的には伝わりません。
たとえば、こう添えるだけで受け止め方は変わります。「今日は根の中のお掃除をしました。まだ治療の途中なので、次回も続きを行います。できるだけ間を空けずに進めていきましょう」。あるいは「次回は被せ物を合わせます。今日取った型をもとに製作しますので、完成する頃にご予約をお取りしましょう」。
ただ「2週間後に歯医者へ行く」という予定ではなく、「治療の続きを受ける日」として理解していただける。患者さんが治療の途中で来院されなくなる理由の一つは、ここにあります。痛みがなくなったから治ったと思う。忙しいから、もう少し先でもいいだろうと考える。患者さんの立場に立てば、どちらも理解できる気持ちです。だからこそ、診療室での説明が効きます。
次回の予約が先になる場合は、もう一段の注意が必要です。三週間後、一か月後、それ以上。先の予定ほど忘れやすく、都合も変わりやすい。希望する時間帯に予約が取れているか。予約の取りづらさ自体がキャンセルの原因になっていないか。声かけの一言だけでなく、予約の取りやすさまで含めて見直してみてください。
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関係ができている患者さんは、連絡をくれる
飲食の現場にいた頃から感じていることですが、お客様との関係は、通い続けていただくうえで本当に大切です。歯科医院でも同じです。
どれだけ信頼関係があっても、仕事や家庭の事情で来院できないことはあります。ただ、普段からスタッフとよく話している患者さんと、ほとんど会話をせずに通っている患者さんでは、予約に対する気持ちが変わります。
担当の歯科衛生士が「前回、歯磨きの方法を少し変えていただきましたが、その後いかがですか」と声をかける。次に来られたときに「前より磨けるようになっていますね」と変化を伝える。小さなやり取りが積み重なると、患者さんは自分のことを見てもらえていると感じます。
反対に、毎回担当が変わり、前回話したことも引き継がれていない。受付では予約を取るだけ、診療室では必要最低限の会話だけ。それでは、どうしても事務的な場所になります。
すべての患者さんと長く話す必要はありませんし、無理に親しくなる必要もありません。大切なのは、一人ひとりの状況を知ろうとすることです。平日の夕方しか通えない方。小さなお子さんがいて予定が変わりやすい方。過去の治療で怖い思いをして、通院そのものに緊張している方。それをスタッフが把握しているだけで、声のかけ方も予約の取り方も変わります。
「お仕事のご都合もあると思いますので、難しくなったら早めにご連絡くださいね」。この一言が自然に出てくる医院は、患者さんも相談しやすい。無断キャンセルを防ぐために必要なのは、患者さんを厳しく管理することではなく、連絡しやすく相談しやすい関係をつくることです。
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起きたあとの一本の電話で、通院が続くかどうかが決まる
どれだけ対策をしても、無断キャンセルをゼロにはできません。体調不良、急な仕事、家庭の事情。予定どおりに来られないことは誰にでもあります。
問題は、起きたあとです。「次からは連絡してくださいね」。医院側としては当然の気持ちですが、患者さんによっては、申し訳なさや気まずさからそのまま通院をやめてしまいます。治療が終わっていない方が来院されなくなることは、医院にとっても、その方自身にとっても望ましくありません。
だから最初の連絡では、まず状況を気遣うことをおすすめします。「本日ご予約をいただいておりましたが、お見えにならなかったのでご連絡しました。お変わりありませんか」「ご都合が合わなかったようでしたら、あらためて予約をお取りできますので、ご連絡ください」。これで十分です。
繰り返し続く方には、別の対応が必要になることもあります。予約枠には限りがあり、他の患者さんへの影響もあります。ただ、その場合もスタッフ個人の判断に任せず、医院としてルールを決めておく。何回続いたら院長に相談するのか。長時間の枠はどう確認するのか。決まっていれば、スタッフは迷わずに動けますし、人によって対応が違うという状態も避けられます。
連絡が取れたときに、理由を確かめてみてください。無理に聞き出す必要はありません。ただ、忘れていたのか、日時を勘違いしていたのか、通院に不安があったのか。患者さんの話の中に、医院が直せるヒントが入っていることがあります。
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「多い気がする」を、数字で確かめる
もう一つ取り組んでいただきたいのが、キャンセルの状況を数字で把握することです。
「最近キャンセルが多い気がする」「月曜日は特に多い気がする」。現場ではよくある会話ですが、集計すると印象と違う結果が出ることもあります。無断キャンセルが月に二十件あるとして、予約総数が四百件の医院と千件の医院では意味が違います。前者は五パーセント、後者は二パーセントです。件数だけでは判断できません。
数字を見るときは、無断キャンセルと事前連絡のあるキャンセルを分けてください。早めに連絡をいただければ別の方をご案内できますが、時間を過ぎて連絡がない枠は埋められません。医院への影響が違うものを同じ数字にまとめると、打ち手が見えなくなります。
そのうえで、曜日、時間帯、診療内容、初診と再診に分けて見ます。平日の夕方に集中しているなら、仕事帰りの方が予定どおりに来院しづらいのかもしれません。初診が多いなら、予約から来院までの案内に改善の余地があります。定期検診が多いなら、予約が数か月先になることや、検診の必要性の伝え方が影響している可能性があります。
難しい分析は要りません。まず一か月、予約総数と無断キャンセル数を記録する。対策を始めたら、翌月の数字がどう動いたかを見る。それだけで、スタッフ間の話し合いが具体的になります。
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スタッフを責める仕組みにしない
最後に、マネジメントの話です。無断キャンセルが多いとき、「もっとちゃんと予約を確認して」「どうして減らないの」と言いたくなる場面もあります。売上への影響を考えれば、焦る気持ちは当然です。
ただ、スタッフも好きでキャンセルを起こしているわけではありません。患者さんが来られなければ、電話をかけ、診療室に状況を伝え、予約表を組み替える。スタッフにとっても負担です。そこで責められれば、現場の空気が悪くなるだけで、数字は動きません。
誰かの責任にするのではなく、医院全体で直せることを考える。朝礼で「最近、定期検診の予約忘れが少し増えているみたいですね。何かできることはないでしょうか」と話題にしてみる。受付から「前日に確認の連絡があれば減るかもしれません」、歯科衛生士から「次回の検診がなぜ必要なのか、もう少し説明したほうがいいかもしれません」という声が上がるかもしれません。
毎日患者さんと接しているスタッフだからこそ、気づいていることがあります。それを拾って、できることから試す。その積み重ねが、キャンセルの減少だけでなく、医院全体の仕事の進め方を見直すきっかけになります。
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無断キャンセルを減らすことは、通いやすい医院をつくること
無断キャンセルの対策というと、予約管理やペナルティの話に目が向きがちです。ルールを明確にすることは大切ですし、守っていただきたいことはきちんと伝える必要があります。ただ、それだけでは動かない部分があります。
予約を忘れないように案内する。次回来院する理由を、患者さんにわかる言葉で説明する。忙しい方でも予約を変更しやすくする。不安や事情を話しやすい関係をつくる。起きたときには、理由を確かめて改善につなげる。
並べてみると、無断キャンセル対策の多くは、普段の診療と患者さんへの接し方を見直すことと同じです。そして、これはキャンセルだけの話で終わりません。患者さんが安心して通える。治療の必要性を理解して、納得して次の予約を取れる。スタッフが無理なく働ける。この状態が整えば、結果として予約も守っていただきやすくなります。
無断キャンセルが起きたとき、不満を感じるのは自然なことです。ただ、そこで終わらせるのは、もったいない。どうすれば、患者さんにもっと通いやすいと思っていただけるだろう。その問いから始めてみてください。大がかりなシステムを入れなくても、明日の診療から変えられることは、きっとあります。
財津 昇
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