セミナーで学んだことが、現場で使われない構造的な理由

02 セミナー・学び

01
「実践率10%」という事実

セミナーを終えた直後の受講者は、熱意に満ちています。「明日からやります」「これは絶対に取り入れます」。終えたその瞬間こそ、いちばん前向きです。

しかし、3ヶ月後にどうなっているか。正直に言えば、学んだことを現場で実践している先生は、全体の10%程度です。

この数字を聞いて、「そんなものだよね」と流してしまうのは簡単です。確かに、そういう構造はある。それは事実でしょう。

ですが私は、この数字を受け流してはいけないと考えています。見て見ぬふりをしてはいけない、と。なぜなら、学びが現場で使われなかったとき、それは届いていないのと同じだからです。

KEY INSIGHT

学びは、知識として手にしただけでは届いていない。受講者が実践し、成功体験に変わったとき、はじめて「届いた」と言える。

THE DENTIST+が掲げる思想の一つに、この定義があります。この基準で考えると、実践率10%とは、私たちの仕事がまだ90%、未完成だということです。

02
受講者の問題で終わらせない

ここで大切なのは、実践率の低さを、受講者の問題にしないことです。

やる気がないから。忙しいから。本気じゃないから。あるいは、構造的にそういうものだから。こうして片付けてしまうのは、とても簡単です。

しかし、そこで思考を止めてしまうと、より良いセミナーも、より良いノウハウも、届けることができなくなります。

実践されないのは、学ぶ側の問題ではない。学びを届ける、私たち側の設計の問題である。この視点が、何よりも重要だと考えています。

03
実践されない、3つの理由

では、原因はどこにあるのか。私は、3つあると考えています。

一つ目は、学んだ内容が、現場の文脈に変換されていないこと。

セミナーで語られるのは、講師の先生が、自分の医院で成功させた方法です。講師の医院の文脈では、それは正しい。しかし、受講者の医院は、スタッフの人数も、患者層も、地域の特性も違います。学んだ内容を、自分の医院の文脈に置き換える。この作業を、受講者が一人で行うのは難しい。簡単であれば、そもそも課題にはなっていないのです。まず、ここに設計の余地があります。

二つ目は、最初の一歩が大きすぎること。

セミナーでは、完成形を見せます。成果の上がっていないノウハウを提供するわけにはいきませんから、当然です。そして、完成されたノウハウは、魅力的です。ですが、完成形を見せるほど、最初の一歩が遠く感じられてしまう。まず何をすればいいのかが具体的に示されていないと、人は動けません。学びが行動に変わるには、最初の一歩の明確化が欠かせません。

三つ目は、学んだ直後の熱量が、1週間で冷めてしまうこと。

セミナー当日は、講師の熱量に触れ、「やるぞ」という気持ちがあふれてきます。それ自体、十分に価値のあることです。しかし翌日、医院に戻れば、目の前の患者さん、スタッフからの質問、積み上がった事務処理が待っています。そこで我に返り、スイッチが切り替わる。3日で忘れ、1週間で元に戻る。これは、先生の意思の問題ではありません。人間の脳の構造であり、環境の問題です。熱量を維持する仕組みがなければ、どんなに良いノウハウも、すぐに蒸発してしまいます。

04
当日と翌日のあいだに、橋を架ける

この3つの理由には、共通する構造があります。

セミナー当日の体験と、翌日からの現場。この二つのあいだに、橋が架かっていないのです。

この橋を架けることが、私たちの仕事だと考えています。

正直に言えば、明確な答えを持っているわけではありません。これは、永遠の課題でもあると思っています。それでも、いくつかの取り組みは始めています。

セミナー後の実践をサポートする仕組みを設計すること。受講者が最初の一歩として何をすればいいかを示すこと。オンラインで終わらせず、先生が次に進める場所へ案内すること。

一見、ビジネスの構造の話に聞こえるかもしれません。ですが私は、オンラインで知識を得ただけで問題が解決するほど、経営は甘くないと考えています。

目の前の現実を変えるのは、最終的には先生の行動です。これは動かない結論です。しかし、その行動を後押しすることは、私たちにできる。最初の一歩を具体的に示すこと、時間を置いて学びを振り返るきっかけを届けること。これらは、私たちの仕事の中で実現できると考えています。

05
実践率を、1%ずつ上げていく

受講したすべての先生を、具体的な行動に導く。実践率を10%から一気に50%へ引き上げる。それは、現実的ではないかもしれません。

しかし、10%を11%にすることは、できるはずです。そして、継続的な取り組みによって、11%を12%に、12%を15%に。

この1%の積み重ねを追求するかどうか。「人ってそんなものだよね」で終わらせるのか。「申し込みをたくさんいただけたから良かった」で終わらせるのか。

受講してくれた先生は、実践してくれたのか。成功体験に変わったのか。ここを考え続けること、考え抜くこと。それが、セミナー事業の本質だと考えています。

学びが実践され、成功体験に変わる。その設計を追求し続けることが、THE DENTIST+の仕事であり、私自身が毎日向き合っているテーマです。

受講された先生方には、「もっとこんなことを学びたい」「こんな講義をしてほしい」「こんなサポートはできないか」。そうした声を、どんどん寄せていただけると嬉しく思います。

学びが実践され、成功体験に変わったとき、はじめて、私たちの仕事は完成する。


財津 昇
歯科医院の経営を、一歩先へ。
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